平成20年3月31日 マイスター通信 第14号
第 14 号
 
 
地  の  塩
地産地消推進活動支援委員会委員長代理
斎 尾 恭 子
 
  日本経済は終戦後ほぼ10年を経て、1955年ごろから世界に稀に見る高度成長を遂げ国民所得は著しく増大しました。 そして1992年ごろにバブルがはじけるまでのその30年余りの間に、日本人の食生活はその歴史上経験したことのない大変化をしました。 米を主とする炭水化物の摂取減少や畜肉や乳製品など動物性脂肪やたんぱく質摂取の増加、朝・昼・夜食の家庭内での分散(個食、孤食、小食)など 家族単位の食生活の崩れ、食品産業の発達による家庭内調理の代替え、食品流通産業の発達による遠距離食材の流通、外食・中食(なかしょく)産業の隆盛、 農家人口の減少や高齢化する農山漁村、国際貿易の発達と食料自給率の減少等々、国民の生活は量的・質的に変化して、食に対する価値観が変わりました。 多くの人々は世界中のおいしいものを便利な形で求め、食の本来あるべき姿を見失いかけていました。 しかし一方、1970年代後半から80年にかけて自然環境保持、食の安全・安心への関心が徐々に芽生えていました。 そして、1990年代後半から立て続けに生じた、病原大腸菌O−157を始めとする食中毒事件、ダイオキシン汚染、輸入野菜の農薬混入、 BSEやトリインフルエンザの発生、産地や表示偽装事件、最近の中国冷凍食品による食中毒事件など数々の食の安全・安心を脅かす事柄は、 我々の飽食へのつけであり、今、食のあり方を改めて考えなければいけません。
  大分県で1980年に始まりました一村一品運動は、村おこしのためにその地域の伝統的・特徴ある農水産物を世界にも通用する産物として地域自身が生み出すという画期的活動で、 2006年には、外務省や経済産業省の支援で開発途上国の農業開発方策として進められています。 地産地消は、農林水産省により日本の農山漁村により近い立場で、顔の見える農産物の販売や都市と地域の交流に視点におき、この数年支援を加速しています。 そして今までの本当に点の存在に過ぎなかった活動が次第に面をなしてきています。
  地域特産物マイスターはその地産地消活動のリーダー的存在と考えます。 伝統的な地域の産物、それもほっておけば忘れ去られるような特産物や伝統技術を、伝承と発展の中で守り育てる方々です。 その存在は地の塩、世の光ともいえる絶対に必要な方々と思い、常日頃尊敬申し上げます。
発行 財団法人 日本特産農産物協会
〒107-0052 東京都港区赤坂1−9−13 TEL:03-3584-6845 FAX:03-3584-1757
URL http://www.jsapa.or.jp
 
 
平成19年度地域特産物マイスターを認定しました。
  本年度の地域特産物マイスターは、別添のとおり23名の方が認定されました。認定者数は、8年目を迎え156名になりました。
  協会ホームページでは、カラー写真入りで地域特産物マイスターの技術内容や活動状況等を載せ、マイスターの方々を紹介しております。
  今後地域特産物マイスターとして、特産地発展のためになお一層活躍されることが期待されております。
 
「第7回地域特産物マイスターの集い」が2月26日開催されました。
  地域特産物マイスター認定証の交付とマイスターの相互交流を図るための「第7回地域特産物マイスターの集い」が、2月26日(火)13:30〜16:30、前年と同じ東京都港区赤坂 三会堂ビル石垣記念ホールにおいて開催され、マイスター、関係者 90名余が参加され開催されました。この中で、平成19年度認定者の方に当協会小高理事長から、認定証が交付されました。今後のご活躍が期待されるなかで、代表して茨城県つくば市の鈴木太美雄さんから決意が延べられました。
  本年は、昨年に続き、マイスター認定者の代表4名の方々に、活動の体験発表をして頂き、その後パネルデスカッションによる討論を行い、マイスターの相互の交流を図りました。コーディネイターは、地域特産物マイスター協議会会長の山田琢三氏にお願いしました。(詳細は、マイスターの集い報告書)
1. 挨 拶
  主催者挨拶 (財)日本特産農産物協会理事長 小高 良彦
  来賓挨拶 農林水産省大臣官房審議官 佐々木昭博氏
2. 平成19年度地域特産物マイスター認定証の交付
3. 認定者代表挨拶
  鈴木太美雄氏 茨城県つくば市 果樹(ブルーベリー)
4. 地域特産物マイスター活動体験発表
  米林利栄 氏(平成12年度認定) 石川県金沢市 加賀野菜
  青木勝雄 氏(平成13年度認定) 静岡県藤枝市 手もみ茶
  上田 稔 氏(平成15年度認定) 茨城県小美玉市 れんこん
  小松美枝子 氏(平成18年度認定) 静岡県伊東市 ハーブ
5. パネルデスカッション
  【コーディネイター】 山田 琢三氏(平成12年度認定) 香川県さぬき市 さとうきび (地域特産物マイスター協議会会長)
  【パネラー】 体験発表者に同じ
6. 全体討論
 
平成19年地域特産物の持つ機能性等に関する研究会
「特産農作物セミナー」が開催されました。
  当協会では「平成19年度特産農作物セミナー」を、去る1月28日に三会堂ビル9階の石垣ホールで、80名余の参加者を得て盛会裡に終了しました。
  本セミナーは平成13年度から「健康機能性」と「景観形成」を主テーマに開催してきたもので、本年度は、黒大豆といぐさ・畳表を対象にとりあげました。
  研究会は、座長に元農林水産省北陸農業試験場長 平岩進氏をお願いし進められました。
  (詳細は、セミナー報告書)
  プログラムは、次のとおりです。
黒大豆の機能性について  
  (株)菊池マイクロテクノロジー研究所 菊池 佑二 氏
黒大豆の生産、流通等について  
  (株)菊池食品工業代表取締役 菊池 幸 氏
いぐさ・たたみの機能性について  
  北九州市立大学国際環境工学部環境化学プロセス工学科准教授 森田 洋 氏
たたみの生活と癒し  
  全日本畳事業協同組合理事長 増田 勇 氏
総括討議  
 
地域特産物マイスターの活動支援
  当協会では、マイスターが研修会などの講師に招かれ、技術の普及、産地の育成等の指導を行うに際し、その経費の一部を負担するなどマイスターの活動の支援を行っています。
  平成19年に当協会が活動支援を行ったマイスターの研修会等は以下のとおりです。
@平成19年4月20日 山口勇次郎 釜炒手揉み茶体験学習会
(嬉野釜炒茶協議会)
A平成19年6月13日 小畑 文昭 身近でおいしい加賀野菜講座
 
B平成19年7月1日 脇  博義 お茶摘み体験in富郷
(JAうま富郷出張茶業部)
C平成19年7月19日 細見 俊昭 西羅亨熟年者農業実践講座現地研修会
 
D平成19年7月22日 小松美枝子 NPO・ジャパンハーブソサイティ講習会
 
E平成19年9月2日 青木 勝雄 手もみ茶の製造技術の伝承
 
F平成19年9月26日 杉本 正博 青年講座〜おいしい野菜作りと選び方〜
 
G平成19年9月30日 阿部  誠 ハーブを園芸活動に取り入れるための知識
 
H平成19年10月4日 杉本 正博 環境調和型農業技術講習会
 
I平成19年10月25日 外山 鶴良 ハーブJHS静岡市研修会
 
J平成19年10月31日 細見 俊昭
東内 秀憲
山本 博一
丹波黒大豆カレッジ先進地視察研修会
 
K平成19年11月7日 小池 彼男 手もみ茶体験学習
 
L平成19年11月11日 高橋 良孝 山口ハーブ講演会
 
M平成19年12月11日 礒田 瑞子 米消費拡大講習会
 
N平成19年12月23日 得野 隆継 ジャパンハーブソサイティ金沢市研修会
 
O平成20年1月18日 森口 昌英 熟年者農業実践講座果樹剪定講習
 
 
全国地産地消推進フォーラム2008が開催されました。
  全国地産地消推進フォーラム2008が平成20年2月28日(木)農林水産省7階講堂(東京都千代田区霞が関)で開催されました。
  地域で生産されたものを地域で消費する「地産地消」は、農林水産省の新しい施策として新たな食料・農業・農村基本計画においても「攻めの農政」の一つに位置づけられて、食料自給率の向上に向け全国展開が図られており、当協会もその一役を担っています。
  当協会は、平成17年度から地産地消推進活動支援事業を展開しており、この行事の主催である全国地産地消推進協議会(会長小泉武夫氏)の事務局と地産地消優良活動者を表彰するための審査会である地産地消推進活動支援委員会(表彰審査会委員長:小泉浩郎氏)の事務局になっております。次の優良活動者については、この全国地産地消推進フォーラム2008の表彰式において、農林水産大臣賞、全国地産地消推進協議会会長賞及び農林水産省関係局長賞が授与されました。
(詳細は、全国地産地消推進フォーラム2008報告書)
農林水産大臣賞
(地域振興部門)
長野県 農事組合法人旬の味ほりがね物産センター組合
農林水産大臣賞
(交流促進部門)
大阪府 農事組合法人「かなん」
全国地産地消推進協議会会長賞(特別賞) 栃木県 都賀町学校給食地産地消推進会議
農林水産省生産局長賞 北海道 羊蹄山麓味覚フェスタ実行委員会
農林水産省経営局長賞 岩手県 農事組合法人いさわ産直センターあじさい
農林水産省農村振興局長賞 神奈川県 農事組合法人 小田原産直組合
水産庁長官賞 高知県 窪津漁業協同組合
農林水産省生産局長賞 佐賀県 農事組合法人 そよかぜ館
 
また、「顔が見え、話ができる関係づくり交流会〜全国地産地消推進フォーラム2008」 は、次の内容により行われました。
開催日時: 平成20年2月28日(木)12:30〜17:00
会   場: 農林水産省7階講堂
〒100−8950 東京都千代田区霞が関一丁目2−1
内   容  
  テーマ『みんなの和と元気を育てる地産地消』
  (1) 全国地産地消推進協議会総会
  (2) 基調講演  
    演題『地産地消と学校給食』
    埼玉県学校給食会事務局次長 大沢 次夫氏
  (3) 平成19年度地産地消優良活動表彰式
  (4) 表彰者による活動事例発表
    農林水産大臣賞(地域振興部門) 長野県 農事組合法人旬の味ほりがね物産センター組合
    農林水産大臣賞(交流促進部門) 大阪府 農事組合法人「かなん」
    全国地産地消推進協議会会長賞 栃木県 都賀町学校給食地産地消推進会議
  (5) パネルデスカッション
   
パネラー 経済エッセイスト 秋岡 栄子
  筑波大学大学院教授 永木 正和
  上記活動事例発表者  
コーディネーター 山崎農業研究所事務局長 小泉浩郎
 
地域特産物マイスター協議会総会が開催されました
  マイスター協議会総会は、集い終了後、山田会長の司会のもとに出席マイスター全員で開催された。始めに山田会長から「マイスターがお互いに目的意識をきちっと定めあって活動していきたい。マイスターの皆さんは、非常に変化に富む全国各地で広い視点からいろいろな分野を開拓して活躍しておられますので、相互に交流を深めて頂きさらに発展するための一助としてマイスター協議会が、役立つようにしてまいりたい。」との挨拶がなされた。議事に入り最初に、平成19年度の決算及び監査報告が事務局及び監事(高橋監事)から提案され満場一致で承認された。続いて平成20年度予算案が事務局から提案され原案どおり承認された。
  また、平成19年度で期限となる協議会役員の改選が行われ、新役員が次のとおり決定した。
 
地域特産物マイスター協議会役員
平成19年2月26日
役  員
氏    名
住    所
認定年度
会  長
 
山田 琢三
 
香川県さぬき市津田町津田 2279
TEL 0879-42-3384
平成12年度
 
副会長
 

副会長
 
中森  慰
 

上田  稔
 
三重県度会郡度会町大久保36
TEL 0596-62-0373

茨城県小美玉市大字下玉里 2307
TEL0299-58-2186
14
 

15
 
理事
 

理事
 

理事
 

理事
 

理事
 

理事
 

理事
 

監事
 

監事
 
翁長 周子
(おなが ちかこ)

山本 博一
 

作本 弘美
(さくもと)

阿部  誠
 

斎藤 作圓
 

鈴木 丑三
 

栗田 和則
 

高橋 良孝
 

原  キヨ
 
沖縄県那覇市三原2-16-10
TEL 098-834-7922

兵庫県篠山市川北484
TEL 0795-93-0761

熊本県宇城市松橋町東松崎223
TEL 0964-32-4859

長野県茅野市玉川6486
TEL 0266-72-1778

秋田県由利郡西目町字井岡208
TEL 0184-33-3469

静岡県伊豆市湯ヶ島27−1
TEL 0558-85-0700

山形県最上郡金山町大字中田298
TEL 0233-52-7132

東京都新宿区細工町1-5-701
TEL 03-3267-2105

福島県棚倉町一色字カナイ神35番地
TEL 0247-36-3265
12
 

13
 

14
 

15
 

16
 

16
 

17
 

12
 

14
 
(備考)任期:平成20年2月27日から平成22年総会の日まで
 
  平成19年度決算及び平成20年度予算は、次のとおり。
【平成19年度決算】
1.収入の部
単位:円
事    項
決 算 額
備     考
前期繰越金
会費収入
 会員会費(18年度)
 賛助会員会費
懇親会負担金
利 子
119,503
45,000
45,000

58,000
230


(15人×3,000円)
 未加入者2人
 2,000円×29人
222,733
 
2.支出の部  
事    項
決 算 額
備     考
活 動 費
  諸 謝 金
  会 議 費
  印 刷 費
  雑   費
次期繰越金
82,762

75,412

7,350
139,971

マイスター通信原稿料
マイスター懇親会費

マイスター通信取材費等
222,733
 
 
【平成20年度収支予算】
1.収入の部
単位:円
事    項
予 算 額
前年度決算額
備     考
前期繰越金
会費収入
  会員会費
  賛助会員会費
懇親会負担金
利 子
139,971
69,000
69,000


10
119,503
45,000
45,000

58,000
230


23人
208,981
222,733
 
2.支出の部  
事    項
予 算 額
前年度決算額
備     考
会費収入
  諸 謝 金
  会 議 費
  印 刷 費
  雑   費
次期繰越金
208,981
40,000
80,000
50,000
38,981
82,762

75,412

7,350
139,971

マイスター通信原稿料
マイスター懇親会費
マイスター集い等
マイスター通信取材費等
208,981
222,733
 
 
 
 
千 原 信 彦    
地域特産物マイスター審査委員
  (元日本農業新聞論説委員)
 
  年中同じ味を消費者に! 銘茶「足柄茶」の特徴生かして
  石渡哲也さん(46)
  神奈川県山北町  緑茶ブレンダー
  神奈川県の西部、山北地方を中心に、約400fの茶園がある。ここで摘んだ生葉は、荒茶加工され、足柄上郡山北町にある県農協茶業センターに運び込まれる。同センターでは、集荷された荒茶を仕上げ、各地に送り出す。一元集荷多元販売だ。この仕上げの段階で、石渡さんら製造担当者が最終の品質チェックを行う。だから毎日、5、6種類のお茶を飲む。
荒茶の集荷シーズンになると、5000点もの荒茶が運び込まれ、石渡さんらは連日、鑑別のための試飲に追われる。「だから体調を崩せない。風邪でも引けば、鑑別できなくなるから」とスポーツ選手並みの節制が要求されるという。タバコは舌が麻痺するからやめ、酒も当然控えめにする。
「足柄茶」と地域ブランド登録した製品は、「極上品なら極上の味に仕上げる。そのためにいろんな葉を組み合わせて仕上げる。年中同じ味で消費者に届ける。それがブレンダーの役目」と石渡さん。
  茶はそれぞれ個性があり、農家の、畑ごとに味が異なる。これを一定の味に持って行くには、まず親茶を選び、これに5種類くらいを混ぜて作り上げる。
  ブレンダーの腕を磨くには、茶を知ること。ワインのソムリエは、世界中の様々なワインを知っている。「私も、県内の茶は全部飲んだ。そして、足柄茶はこういうものといったのを、体にしみ付ける」。
「鑑別作業は考えている暇はない。直感で、味、香り、色沢、形を等級付けなくてはならない。農家の生活がかかっているから、我々も真剣に取り組む」。
  現在、同センターには、石渡さんをはじめ4人が製造を担当するが、毎日勉強会を欠かさない。石渡さんは陣頭にたって出来栄えなどの指導をする。「私はこの味が好き、といっても、それが足柄茶の味でなければなんにもならない。ブレンダー技術の上達法は、回数をこなす以外にない」と石渡さんは言い切る。
  官能検査は、人それぞれに物差しが違う。この物差しを生かしながら、他産地と違う特徴を足柄茶に持たせる。それが地域ブランドとしての「足柄茶」だからだ。
  ただ、近赤外線分析器も備えてある。クレームがあった場合、官能検査だけでは説明できないから、その時は、この分析器を使ってお客さんの疑問に答えることにしている。 「足柄茶は深蒸ししない。山間部で育つため、形状がしっかりしており、香りが良い。水色も黄金色になる。つまり、うま味、甘み、渋みのバランスがとれている」と石渡さん。足柄茶はこんなお茶で、これを消費者にしっかり訴えてきている。
  一元集荷多元販売だから、流通経費が省略され、よいものを安く供給できる利点がある。当然いい材料があるから、石渡さん達の腕も存分に振える。
(茶の鑑定作業に当たる石渡さん)
  静岡県での修業時代、世話になった恩師の故瀧秋道氏(手もみ茶の県無形文化財)の言葉「お茶は神秘に満ちている」「お茶を好きなれ」が今も石渡さんの好きな言葉だ。
「農業は環境を守る。茶園を増やし、振興していかないといけない。景観をよくし、土砂崩れを防ぐ効果も大きい。『医療は食から』といわれるように、お茶をどんどん飲んで欲しい」が石渡さんの願いであり、外国への輸出も盛んになっていくことを念願している。
 

 
  暮らしに役立つハーブ作り! 身近なもの生かし無農薬
  小松美枝子さん(66)
  (静岡県伊東市) ハーブ、エディブルフラワー
  今年の「第7回地域特産物マイスターの集い」で、注目されたのは小松さんの害虫防除法だ。「何十年も無農薬でやってきたから、植物の弱みも分かってきた。私のハーブ園は、低農薬ではなく、すべて無農薬」と自宅裏の園を紹介しながら話す。
小松さん独特の防除法は、共生植物(コンパニオンプランツ)とハ−ブエキス。共生植物は、脇に植えておくとそれだけに虫が寄る植物と虫が忌避する植物の2種ある。エキス(エッセンシャルオイーブエキス。共生植物ル)の方は、香水にも使うくらいだから、小さな瓶で3万円もするものがあり、気軽には使えない場合もあるが、害虫駆除の効果は高い。
  この共生植物とエキスの種類がものすごく多く、試しているものもあり、虫との相性もあって、「一言では紹介できない」と小松さんは言う。これらの成果はすべて豊富な海外での経験や文献で小松さんは見つけた。その一例が別表だ。
  この中には、オーストラリア、ニュージーランドの原住民であるアボリジニ、マオリ族の言い伝え、さらには漢方薬での処方、それにもちろん海外で仕入れた知識など、数多くの文献や言い習わしでの知恵が詰まっている。
(表 コンパニオンプランツ)
◎害虫を防ぐ   ◎害虫を寄せる
作  物
害  虫
忌避植物
ニオイスミレ アブラムシ ローズマリー
バラ類 アブラムシ ニンニク、ニラ
(オールドローズ)    
アブラムシ

ラベンダー

 
アリ ロケット  
モンシロチョウ ローズマリー  
(アブラナ科類)    
ヨトウムシ マジョラム  
 
害  虫
餌  植  物
コガネムシ
ハダニ
 
 
ハチ
 
 
 
 ゼラニウム
 ホトケノザ
 カラスノエンドウ
 レモンバーム
 キャットニップ
 ヒソップ
 モナルダ
 

「でも、本来的には病害虫が出にくい環境づくりが重要。土づくりをし、輪作の励行、有機物施用、間引き、摘心、整枝、株分けなどの細かな管理が大切になってくる」その上で、害虫が付きにくい植物を所々に計画的に植える。除虫菊や表にあるローズマリーなどだ。チャイブやフレンチマリーゴールドもよい。
  小松さんの著書「ハーブ 育て方とクッキング」(ミエコズガーデン社刊、300円)では、身近にあるもので防除方法として、
@除虫菊の乾燥した花を砕いて水に浸し、ガーゼで濾してスプレー Aアルミホイルで株元を覆うと反射で地面と空間の区別がつかなくなるので飛んでくる害虫を防げる B夜間鉢の周囲にビール入りの皿を置くとナメクジが寄ってくる C水1gにタバコの吸い殻を50本ほど紙を除いて入れ、1晩置いたものをガーゼで濾しスプレーする。
  たいていの害虫に効果がある、さらに石鹸液を加えると害虫に付着しやすくなる
D重曹液(重曹80c、可溶性デンプン 10%、グリセリン脂肪酸エステル10%)の混合液はうどんこ病によく効くEアブラムシには次のものをスプレーする。☆濃いめの石鹸液、☆200mlの水にニンニク1片をすり下ろして混ぜ入れ、布で濾したもの、☆牛乳ーーなどが紹介されており、カマキリ、トンボなどの天敵の利用も勧める。
伊豆の大室山麓にある自宅(ミエコズガーデン)の庭には、1000種以上のハーブや薬用植物が栽培され、その栽培法と料理法の教室には、1クラス10人ずつの生徒さんが毎月1回集まってくる。年間で約60人が受講している。
「人より違ったものを育てたい。珍しいものを、おいしいものを、と思っていたら、いつの間にかこんなに集まった。皆さんの (100種以上ある自宅のハーブ園で) 暮らしに少しでも役立ってくれればうれしい。防除法など分からないことがあれば呼んでください。喜んで伺います」と小松さんはいう。
 
 
池 田 洋 一    
(財)日本特産農産物協会専務理事
 
  日本でここだけ・国東半島の七島いを守りたい
−高度な栽培管理技術を駆使したマイスターの技−
宇都宮 務 さん(71)大分県国東市安岐町馬場
  七島いとは畳表に加工される植物であるが、いぐさと違ってカヤツリ草科に属する多年性の草本で、茎は三角形状をしており極めて旺盛な生育をする。最盛期には一日20センチも伸びるという。5月に前年に残しておいた苗を株分けして水田に移植され、3ヵ月後の8月には収穫する。刈り取った茎は真半分に分割し、乾燥して畳表の材料にする。これで織った畳表が「青畳」と呼ばれ、強靱な繊維組織を有しているためかつては柔道畳などに使用されていた。昭和30年台には全国で2千ha程度(うち大分県が約8割)栽培されていたが現在では大分県国東半島のみで僅か10戸程度の農家により生産されている。
(宇都宮さんと奥さんの日出子さん)
  さて、七島いのマイスター宇都宮務さんを国東市安岐町馬場に訪ねようとしている。ここは大分空港のある町で近年キャノン、ソニー、東芝などのIT産業が進出して活気が出てきたところである。宇都宮さんは専業農家として水稲と組み合わせながら伝統の七島いの生産に取り組んでもう50年になる。現在、七島いは16アール栽培し、自家で織り畳表としての出荷量は年約700枚。市内にある合名会社青木本店などの卸屋さんに出荷している。
  青木商店では国東産のほか、中国四川省産、ベトナム産を扱っているが、宇都宮さんの出荷したものは色がよく(程よい緑色)、粘りがあるので最高級品だと畳表部長の松村さんは話してくれた。しかし近年中国産の品質が向上しているとのこと。値段は1枚6千円程度で中国産の1.5倍、ベトナム産の1.7倍。主な出荷先は関東、愛知県、福島県などだが、畳屋さんからの注文は6枚、8枚など当面の需要を賄うもので小口のようだ。
  また、青木商店では七島いを利用した民芸履物を製造して豊後高田市の昭和の町などで販売して好評を博している。
(次期作用の苗畑)
  ここで、七島いの栽培・製織行程を見てみよう。植付け−梢刈り−倒伏防止の結束・網設置−刈取り−茎分割−天日乾燥−袴落し(元打ち)−仕上げ乾燥−製織作業 この殆どが手作業で、機械作業は茎分割、火力乾燥、半自動織機での製織り作業だがら大変な重労働である。特に、分蘖を促し茎数を確保する梢切りを4回も行ながら茎に粘り(堅いが柔らかい)を持たせ、最後に畳表に必要な150cmを確保する作業は台風シーズンの天候とにらめっこで高度な肥培管理技術が要求されると宇都宮さんはいう。
  製織作業はキャリヤ45年の奥さんの受け持である。実際作業を見せて頂いたが半自動織機を見事に操り原草を機械に送り込むその指先の動きは精密機械のように正確かつ優雅だった。ただ、眼や腕の筋肉を酷使  (次期作用の苗畑) するため疲れると言われ1日4枚程度とのこと。
(半自動織機による製織作業)
  抱える課題として宇都宮さんは、若い後継者がいないことと静岡県の織機メーカーが製造を中止したため 補充部品や修理技術がなくなることを挙げておられたが、国東市七島い部会長として需要の拡大が解決策に繋がるとの考えから別府市の旅館等に製品見本を提供したり、行政当局に支援を要請するなど積極的だ。また、宇都宮さんはJAくにさき農協理事をしておられたがこちらは東京大学農学生命科学研究科助教授を退職して帰郷し農業自営を開始した林浩昭さんにバトンタッチし、林さんは現在代表理事常務に就任して農協合併など難問に取り組んでいるが七島い復活への思いが特に強い方とのこと。
  こちらの方では頼もしい後継者ができましたですねと尋ねると「じゃあじゃあ」と宇都宮さんは日焼けした顔をほころばせて笑った。
 
 
「地域特産物マイスターの活動等に関するアンケート」調査報告
   
  アンケート調査結果(PDFファイル)
 
マイスター関連新聞記事
   
  付加価値を高めて勝負 米の加工に活路あり!(田村三千夫)
  手揉み茶の先駆者たち(青木勝雄)
  「品種登録」(上田稔)
  関東大震災の復興策として(石渡哲也)
  山菜生産で産業振興(保坂良和)
  うどんに加賀野菜(小畑文明)
  農のマイスターが交流(山本博一他)
  「軽い培土」完成 水稲育苗作業を軽減(西根雄司)
  達人列伝 肉本来の風味を引き出す(福山晋治)
  高齢農業者のいきがい作戦(保坂良知)
  かぶら寿司名人に学ぶ(権野 晃)
  七尾たくあん ネット販売でも(守屋吉雄)
  200年の伝統学ぶ 津田小児童 白下糖づくりに挑戦(山田琢三)
  おかやま黒まめ 昨州黒(東内秀憲)
  伝統からし巻き 現代に復活(鏑城テイ)
  コマツナ周年栽培 味で築いた地産地消のネットワーク(杉本正博)
  三島の農産物アピール(杉本正博)
  活動テキスト(針塚藤重)
 
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