平成14年8月30日 マイスター通信 第4号
第4号
      地域特産物マイスター協議会の発足にあたって
地域特産物マイスター協議会 会長  山田 琢三

 地域特産物マイスター協議会が関係各位の方々のご支援により設立され、はからずも私がお世話役をお引き受けすることになりました。少数精鋭でスタート台に立ったところであり、しかも激動する政治経済の社会にあって真の人間としての心の源を求めてきた同士の集いであり、地域社会での実績を積み重ねてきた私たちが21世紀に何をなす
きか、そして「農」を原点としたなかに温存されてきた幾多の自然の恵みや、心と心の絆を大切に、お互いの連携強化を図ろうと協議会を発足したものであります。
 思えばわが国は、高度経済成長を目標理念に掲げ、開発、大量生産、大量消費を第一義として国をあげて突っ走ってきました。しかし、豊かさの一方で社会・経済の破綻、環境破壊など国内に様々なひずみが出てきました。ようやく最近になってその間違いに気が付き、方向転換を余儀なくされました。なかでも、都市型社会から農村型社会への
転換を強力に進めてゆく必要があると思われます。特に、第1回地域特産物マイスター協議会において、森巌夫先生のご講演のなかで「むらづくり、特産づくり、人づくり」の決め手となるリーダーの要件等で「やる気・勇気、根気、ひらめき、人気」=「四つのき」、そして「愚痴、無知、けち、やきもち」=「四つのち」、「き」と「ち」の意味する深さ、広さを私たち仲間に求められていると思います。それぞれが学んだ道を後継者に託していかねばなりません。それに対応出来る人間味あふれる情熱と活力と良識をお持ちの皆様方と「出会い、ふれあい、助け合い」を合言葉に力を合わせ、大地の恵みを限りなく味わうために、農の文化の再発見に努めなければなりません。
 私たちは「魅力、夢」を求めて精進努力してまいりました。その実績に慢心することなく今一歩、心を新たに精進していこうではありませんか。会員各位におかれましては使命感、目的意識を持ち誇りを胸に「農」のロマンを求めて限りなき課題に挑戦していきたいものです。協議会の発足に対しお力添えを賜った皆様に厚くお礼申し上げご挨拶とします。
 

発行
財団法人 日本特産農産物協会
〒107-0052; 東京都港区赤坂1−9−13
TEL:03−3584−6845
FAX:03−3584−1757
ホームページアドレス http://www.jsapa.or.jp
○平成14年度地域特産物マイスターを募集しています。
 平成12年度に発足した地域特産物マイスター制度は、2年間に39名のマイスターを認定し、それぞれ各地で活躍されております。また、2月には地域特産物マイスター協議会を発足させ、その組織化が緒に着いたところです。
 3年目を迎え本年度も20名程度の地域特産物マイスターを認定すべく、応募期限を9月末日までとして現在募集を行っております。地域特産物の栽培・加工等の分野で優れた技術を有し、特産産地の育成にも活躍が期待される方々について、市町村長、農業改良普及センター所長等から多くの推薦が出されることを期待しております。
 なお、本年度は農業関係の全国段階や県段階の団体からも推薦いただけるよう、実施要領を改正しております。
  この制度が更に発展していけるよう、マイスターに適任の方がおられましたら是非ともご推薦いただきますようお願いします。

○いぐさ・畳表の価格補てんのための事業を当協会が実施します。
 いぐさ・畳表については、平成13年4月にセーフガード(緊急輸入制限措置)が暫定発動されましたが、その後の日中間の協議により本発動は実施されませんでした。このような状況において、国際競争力のある産地の構築を図る必要があり、農林水産省では関係県に対し、高品質畳表の生産による輸入品との差別化を基本とする構造改革を図るための事業を実施しております。当協会では、その事業に関連し、いぐさ生産農家が安定した収入の下で構造改革に取り組めるよう、畳表価格の変動に応じた助成金の交付を行う「いぐさ・畳表構造改革緊急支援事業」(昨年11月の暫定発動期限切れ後に出荷した畳表から対象)を実施することとなりました。
 この事業は、県単位に設立された「い業経営安定基金協会」と契約して負担金を納めたいぐさ生産農家に対して、畳表の市場価格が補てん基準価格を下回った場合に、価格帯に応じて一定額を補填する仕組みとなっており、当協会が事業実施主体としてその役割を担うことになりました。

○地域特産農業情報交流会議報告書を作成しました。
  当協会は、去る2月26日に平成13年度の地域特産農業情報交流会議を開催しましたが、このたびその内容を取りまとめ、関係機関、会議出席者等に配布したところです。その報告書には、「ヤーコン」「ゴマ」「薬用作物」を議題とする専門部会の内容も合わせてまとめております。
  本報告書は、先に配布しました「第1回地域特産物マイスターの集い」とともに余部がありますので、ご必要の方はお申し出下さい。

○全国ハーブサミット那覇大会が11月に開催されます。
 「第11回全国ハーブサミット那覇大会」(全国ハーブサミット連絡協議会、那覇市主催)が、平成14年11月14日(木)〜15日(金)の2日間沖縄県那覇市で開催されます。
 プログラムは、1日目が、大会(講演、事例発表)と交流会、2日目が、分科会、全体会、視察研修となっております。その他オプショナルツアーも用意されております。
 マイスター関係者では、富田忠雄氏が分科会で講演を行い、翁長周子、高橋良孝両氏が分科会の進行役を務めます。
 参加ご希望の方は,全国ハーブサミット連絡協議会事務局(那覇市建設港湾部花とみどり課内,電話098?855?5039 FAX098?855?5040)にお問い合わせ下さい。
  この全国ハーブサミットについては、当協会は第1回から後援し、その開催を支援してきており、多数の方がこの機会に沖縄を訪れ大会に参加されることを期待しております。

○マイスターの活動を支援します。
  当協会では、マイスターが研修会の講師などに招かれる場合などに、その経費の一部を負担する予算を用意しております。
 まだこの制度を利用する方が少ないのですが、マイスターの林与夫氏(あさがお)が石川県森林公園のインフォメーションセンターのオープンイベント(4月29日)において「アサガオ栽培講習会」の講師を務められ、当協会から講師謝金・旅費を支援しました。林氏はオープン記念式典の後、地域特産物マイスター指導コーナーにおいて約100名の家族連れを対象に1日栽培講習・実技指導を行い、イベントの盛り上げに一役買っております。
 マイスターの方が講師などを務められる企画がありましたら、事前に当協会までご連絡下さい。



   「新しい薬用植物栽培法」

  近年、漢方薬が国民医療に広く使われるようになり、生薬原料植物の栽培も全国的に行われるようになってきており、このような植物の品質の確保と安定供給のための栽培研究が各方面で積極的に行われております。
 本書には、国内で栽培されている薬用植物や栽培可能なもの68種類について、成分・薬効、性状、栽培方法などについて詳しく記載されており、薬用植物の関係者及び薬用植物を栽培しようとする人達のための参考書として好適のものとなっています。
発行:(株)廣川書店  〒113?0033 東京都文京区本郷3?27?14
               電話 03?3815?3652
定価:6500円+税     A5版340頁   平成14年5月20日初版発行
編者:佐竹元吉、飯田修、川原信男

流尾 哲也((財)日本特産農産物協会 参与)

 

1.ハーブの専作経営で都市型農業を実践
 

川口 昭一郎さん(70歳:大阪府貝塚市)
 

  貝塚市の中でも都市化の激しい地域でハ―ブを専門に都市型農業を行っている川口昭一郎さん。貝塚市などの泉南地方は地域特産野菜の「みず水なす茄子」や、三つ葉、春菊などの軟弱野菜の産地だが、あえて農業経営の作目としては難しいとされるハーブを選んだのは、長男の芳高さん(43歳)が農林水産省農業者大学校在学中の派遣実習先が東京都江戸川区のハーブ栽培農家だったことがきっかけ。
 川口さんは長男の大学校卒業後の就農に際し、他産業並の給料や休日が確保できる農業を目指して模索し、長男とともにハーブの試験栽培を始めた。昭和59年頃からはハーブの本格的出荷に踏み切り、その後面積も徐々に増やして有限会社を設立。
 現在、川口さん一家は自宅から車で数分の、周辺は住宅に囲まれた農地のビニールハウス(3棟合計33a)で10種類ほどのハーブを栽培。ハーブの栽培・収穫は川口さん夫妻に長男夫妻が行っており、収穫したハーブの出荷前の調製作業には近所の女性2人も加わっている。
 栽培しているハーブの大部分(約25a)はシソ科のミント(ハッカ)のうちの「スペアミント」で、その他、シソ科のペパーミント、バジル、ローズマリー、オレガノ、コモンタイムやセリ科のイタリアンパセリ、チャービル、キク科のフレンチタラゴン(エストラゴン)、タデ科のソレル(スイバ)と品揃えをしている。
 栽培は良品生産のため、全て加温ビニールハウスでの周年施設栽培。夏場も雨水を防ぐためにビニールは張ったままで、ハウスの裾と天井部分の通気で室温を下げる。
 収穫したハーブは自宅に持ち帰り、門の脇の作業室で女性4人が手早く選別、調製して細長いパックに詰めシールを貼る。50パックを一箱の発泡スチロールに入れて出荷。
 出荷はもっぱら川口さんの仕事で、多い時には一日に30箱を隣の泉佐野市の集荷業者まで運搬する。ハーブは神戸、大阪の3青果市場に毎日出荷し、仲買人にも週3回出荷。また、ホテル等からの問い合わせもあり、貝塚市内にあるフランス料理店に定期的に納品している。
 栽培しているハーブの中で、「タラゴン」の面積は現在約1アールと少ない。タラゴンは栽培が難しいので全国的にも生産量が少なく、冬場の低温期は成長が鈍いため訪問時(3月中旬)には1パックが300円から400円と、栽培しているハーブのうちでは最も高値で出荷されていた。このタラゴンは契約栽培で、毎日電話での注文量を品揃えしているが、生産量が少ないため数量制限している。川口さんは、「ハーブは栽培に手間がかかるのに安いので、将来タラゴンの栽培方法が確立されれば、もっとタラゴンの面積を増やして全体の面積を減らしたい。」との意向である。
 川口さんはハーブ栽培を手掛ける前は、「水茄子」やみぶな壬生菜、かぶら蕪などの野菜の栽培を行っており、その当時は他県からも広く農業研修生を受け入れ、研修生には野菜の栽培技術よりも、市場関係者回りなど売り方主体の研修を行ってきた。
 川口さんがハーブを始めてからは、販路の確保のために市場関係者やレストラン等に積極的に足を運び、3市場とレストランなどに安定した販路を確保している。その甲斐あって、ハーブといえば多くは趣味的に作っている例が多い中で、川口さんは「儲かる農業」を実践している。今は長男に経営を任せ、川口 さんは販売先との顔つなぎに徹している。
(写真上:ミントの栽培ハウスでの川口さん)
(写真下:自宅の庭先での川口さん一家)


2. 通勤農業で「加賀野菜」栽培を続行
 

 米林 利栄(よねばやし としえい)さん(58歳:石川県金沢市)

 
  金沢市の地域特産物である「加賀野菜」を中心とした野菜栽培を、自宅から37km離れた中山間で行っている米林利栄さん。父親の利雄さん (84歳)と長男の格栄さん(31歳)とで「加賀太(ふと)きゅうり」や「金時草(きんじそう)」という加賀野菜やトマトなどを作っている。 加賀野菜とは戦前から金沢で栽培され、現在も栽培されている地域特産野菜の中から12品目が認定されているものだ。     
 米林さん一家は当初金沢市街地近郷で農業をしていたが、自宅周辺の都市化が進展してきても、「百姓は農業を捨ててはダメ」との信念から新たな農地を求め、30年間通勤農業で野菜作を続行している。
 1.5haの農地で、ガラス温室26a、ビニールハウス10a、その他露地栽培を行っており、作目はトマト13a、加賀太きゅうり6aの夏作の果菜類と後作としての冬場の軟弱野菜、それに周年栽培の金時草13aだ。
 加賀太きゅうりは父親が育成したきゅうりで、栽培面では自家製堆肥や米ぬかに納豆菌を混ぜて作った「ボカシ」を投入しての土作りに努めている。施設でのきゅうり栽培は普通接木苗を使うが、米林さんは30年間土壌消毒なしで接木苗でない「自根」での連作を続けていると誇らしげに話す。
 「金時草(きんじそう)」のルーツは熊本の水前寺菜とか。キク科の多年草(越冬には5度以上が必要)で、葉の裏が金時豆のような赤紫色をしていることから「金時草」と名づけられたそうだが、初めての者にはなんともややこしい名前だ。酢の物などで食べ、モロヘイヤほどではないが独特のぬめりが特徴で、金沢市では30戸位の農家が露地栽培しており、山間地の施設での周年栽培は米林さんが初めてだ。山間地の方が昼夜の温度格差があり、いい色が出やすいとのこと。
 米林さんは、金時草の周年栽培のため挿芽で苗の更新をしており、後作の軟弱野菜の播種期をずらすために定植は9月から11月となる。次々と伸びる新芽を30cmほどの所で摘み取り、10本一把に束ね、市場価格に応じて10〜15束を通気の良いプラスチックの網かごに入れ出荷。金沢市中央卸売市場の丸果石川中央青果K.Kに一日平均15〜20ケースを毎日出荷しており、10本一把が200〜250円(5月上旬現在)の価格で取引されている。
 金沢では加賀太きゅうりをはじめとして地域で受け継がれてきた特産野菜を、地域の食文化として次の世代に伝えようとする「加賀野菜保存懇話会」の活動を地元の有志が展開中だ。米林さんはこの懇話会の世話役の一人として、加賀野菜を扱う商店の人や生産農家などと一緒に加賀野菜の存続に力を入れている。
 ちょうど米林さんの農場を訪れた日に、地元の小学校に「金時草」の鉢植えの贈呈式を行うところだった。「金時草」の鉢植えを提
供して世話をしてもらうことにより、次世代を担う子供たちに野菜を育てるおもしろさを知ってもらおうとの願いだ。
 米林さんはすでに立派な後継者との共同経営でゆとりを感じる。「金時草を贈呈して食農教育に役立てるのもマイスターの務めかな」と笑顔だ。温室の脇には北陸地方で花が咲くことは極めて珍しい「金時草」が一鉢黄色のかわいい花をつけていた。
(写真上:「金時草」の摘み取り方を説明する米林さん)
(写真下:金沢の八百屋の店頭で売られる米林さんの作った「金時草」)
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